ポルトガルの建築事務所LIKEarchitectsはペイントした鉄の缶を何百個も使って、リスボンのショッピングセンター内に期間限定のアンディ・ウォーホル美術館を建てました。
今年前半の3か月間このミニチュア美術館はリスボン市内のコロンボ・ショッピングモールのアトリウムを占拠し、もう亡くなったアメリカのポップアーティストのオリジナル作品32点を展示していました。
LIKEarchitectsのチームはギャラリーの空間にありがちな中性的な白い壁を使わないことにこだわり、その代わりにウォーホルが自分の絵画の中で執着していた日常生活の中にある物を使ってスペースを構築することを選びました。
「キャンベルスープの缶はよく知られた作品で、日常生活にある物を元々の機能に関わらず昇華し、物を集合的イメージの具体的アイコンにするというアイディアに基づいたものです」と建築家のDiogo AguiarはDezeenに語っています。
「私たちが馴染みのある部品、つまり円筒形の缶を使って美術館を構築するというアイディアを考えた時、この芸術家(ウォーホル)のこの仮定は、私たちの構想段階でとても重要でした。」と彼は付け加えています。
建築家たちは1500個の缶を使って4つ並んだ部屋を作り上げ、テーマに沿ってまとめました。入口は両端にあるので、買い物客は簡単に中を散歩しながら通り抜けることができます。
インスタレーションは高い部分で8缶分の高さがあり、下から3缶分は中に砂が詰められて、壁を安定させています。
Dezeenではこれまでに、ニューヨーク・フリーズ・アートフェアでのSO-ILの白いヘビのようにくねったテントや、アムステルダムの自然保護地区の風景画ギャラリーなどの期間限定ギャラリーを紹介しています。その他のギャラリーはこちらからご覧頂けます。
写真撮影:Fernando Guerra
以下はLIKEarchitectsによる解説です。
期間限定のアンディ・ウォーホル美術館
期間限定のアンディ・ウォーホル美術館は、商業施設内で文化を感じられる空間です。「アンディ・ウォーホル-アイコン/Psaier作品とファクトリー」展の開催場所としてデザインされたもので、リスボンのコロンボ・ショッピングモールで4月11日から7月11日まで開催され、このアメリカ人芸術家のオリジナル作品32点を展示していました。
この美術館スペースを中性的な白い展示スペースにすることは避けて、ウォーホルの空想を利用したインパクトのある視覚効果を創り出すことで、展示作品と関連したものにしています。ペイントした缶を使った結果、普通とは違った物体が形成され、ポップかつ商業的な環境が美術館に再現されています。ショッピングモールの中央広場に設置された美術館の建物は抽象的な外観をしていて、とても魅力的でありながらもポップアートに根差した象徴的表現主義の特色も持っています。
内装はプラスチックスクリーンの透明なカバーを使って、完全に切れ目のない壁に囲まれた内観的な空間になるように設計されました。このカバーは、外部から光が入ってくるようにすることと、2つの相反するスペース(美術館とショッピングモール)の視覚的な関係性を確保する、という2つの機能を合わせ持っています。この方法を用いることで、買い物客の好奇心をとらえ、商業空間の中でギャラリーをぶらりと訪れるように誘っています。
テーマ別に構成された4つの展示室が流れるように続き、ショッピングモールのメイン広場の構造の対称性と合理性に挑戦を挑む新しい通路になっています。この小さな美術館には入口が2つ(両側に1つずつ)あり、周囲を歩いている人々の注目を最大限に集めて、人の流れを最も効率的にするように熟考された場所に作られています。
美術館はアンディ·ウォーホルの芸術作品のように消費社会を反映していますが、文字通り、実際に円筒形の缶のアルミシートを使っています。アンディ·ウォーホル作品特有のこの他の要素、つまり繰り返し(シルクスクリーン)や、もともとの形や機能に関係なく日常生活の品を昇華するという考え、そしてそれを形ある集合的イメージへと変換することが、この空間の製作の基本となっています。
塗装された缶は建築素材として利用され、プロジェクト全体の大きさを決める基になり、面積を決めて空間を創り出し、その空間への入口となるドアを作り出すモジュラー要素となっています。
この建造物の構造的な安定性は、土台部分となる下から3段分の缶に砂を詰めることで解決しました。壁の安定性を確保して缶をずっと強くすることで、誰もがより入り易くなりました。
この期間限定のアンディ・ウォーホル美術館は、誰もが無料で入場できることにより芸術の普及と振興に貢献しようとしたもので、10万人以上が来場しました。
設計: LIKEarchitects
場所: ポルトガル、リスボンのコロンボセンター(Centro Colombo)
プロジェクト開催年:2013年
チームメンバー: Diogo Aguiar、Teresa Otto、João Jesus、Laura Diaz
キュレーター: Maurizio Vanni
製作: SOTART
主な用途:美術館
面積:75㎡
寸法:15.5m x 12.70m x 3.30m