ニューヨークを拠点とする建築家スティーブン・ホールは、韓国の街・ソウルにあるプールの下に秘密の地下ギャラリーを作った。ソウルと言えば、私たちは超高層ビルの計画ばかりを追いかけていた場所だ。
銅で覆われたこの建物はDaeyangギャラリー&ハウス(Daeyang Gallery and House)と名付けられ、そのうち2つのパビリオンは水面の上に出た部分がプライベートギャラリーの入口とイベントスペースになっている。3棟目はオーナーの住居だ。
建物の形は、ハンガリー系カナダ人の作曲家イシュトヴァン・アンハルトのミュージカル曲の形式を模倣しているのだと建築家は語っている。3つのパビリオンの屋根の上に55個ある天窓の配置にそれが最もよく表れているそうだ。
さらに明かりはプールの底へ広がってキラキラときらめき、水を通った光がギャラリーへと広がる。
写真撮影:Ihho Lee
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写真撮影:Ihho Lee
特別の記載が無い限り写真撮影はIwan Baanによる
スティーブン・ホール建築事務所からの解説は以下の通りです。
韓国ソウルのDaeyangギャラリー&ハウス
2008 – 2012
韓国のソウルにあるKangbukの丘に、このプライベートギャラリーと邸宅があります。
このプロジェクトは、「音楽の建築学」の研究スタジオに並行する実験として設計されました。
建物の基本的な形状は、1967年に作曲家イシュトヴァン·アンハルトの楽曲“Symphony of Modules”のスケッチにヒントを得たもので、これはジョン·ケージの本 “Notations” で見つけました。
写真撮影:Ihho Lee
3つのパビリオンは、1つは入口、1つは住居、そしてもう1つはイベントスペースになっていて、ひと続きのギャラリーのある下の階から上へと伸びているように見えます。水が広がり、上と下の繋ぐ水面を形成しています。
写真撮影:Ihho Lee
3つのパビリオンの屋根にある55個の天窓から光が入ってきて初めて、この空間の特別な工夫が分かります。
写真撮影:Ihho Lee
どの棟にも5つの透明なガラスが入っていて、そこから内部の空間へと光が入ってあちこちへ反射し、時間や季節によってその姿を変えて行きます。光の割合は3,5,8,13,21,34,55シリーズを中心に構成されています。
パビリオンの中からの眺めはリフレクティング・プールで縁取られ、天窓とは垂直に配置された庭園に囲まれています。
リフレクティング・プールの底にあるガラスレンズの窓から日差しが入り、下のギャラリーの白い漆喰の壁とグラニテ(花崗岩)の床にまだらに光を照らしています。
ビジターが入口のドアを開けて低い階段を下りると、竹で作られた庭の壁を通ってエントリコートに到着します。
ビジターは目の高さで中央の池を見つめて、水面に反射している3つのパビリオンの全体像を見て取ることができます。
パビリオンの内装は、赤とチャコール色のついた木製の素材で、木の天井を切り取った天窓があります。外装は特注の銅の雨よけで、風景の中で自然に年月の変化を重ねていきます。